横川良太さん・友香さん :自分らしく自由に、という夫婦の思いが実ったカレー専門店「カリースパイス山路」

新型コロナウイルス感染者数が急増し、緊急事態宣言が全国に拡大していた2020年4月。飯山市内にスパイスカレーの専門店「カリースパイス山路」が新規オープンしました。

老舗の「スナック山路」を間借りし、テイクアウトのみで営業を開始。それから約5か月が経ち、今ではInstagram(インスタグラム)の口コミなどで、市外からのお客さまも多く訪れているそうです。

飯山の人気店になりつつある「カリースパイス山路」の横川良太さん、友香さん夫妻にお話をお伺いしました。

夫・良太さんがスパイスカレーを作りはじめた理由

スパイスカレーを作る横川良太さんは白馬村の出身。小学生の頃からスキージャンプを始め、今も現役の選手として活動しています。
4年前に飯山に引っ越し、アウトドア関連の会社に勤めていました。

元々カレーが大好きで、大学時代に東京にいた頃は「とにかく外食はカレーだった(笑)」というほど食べ歩いていました。スキージャンプの合宿で北海道によく行っていて、ご当地名物のスープカレーにハマったそう。

家にいる時もあの味が食べたい!と思い、スパイスをそろえて自分でカレーを作りはじめました。

通っていたカレー店の経営者と話したり、自分が作ったカレーの写真を見てもらったりしているうちに、「お店できるよ!」と言われたことや、知り合いのお店でカレーを作ってふるまい、「おいしいと言ってもらえて、やりがいを感じた」ことなどで、自分でもカレー屋をやってみたい、という思いが醸成されていきました。

「何か」を探していた妻・友香さんが背中を押した

そんな良太さんが、飯山市出身の友香さんに出会ったのは、「SEA TO SUMMIT」というスポーツイベントでした。参加者をおもてなしするスタッフ同士として知り合い、令和元年5月に結婚。

スパイスカレーの店を開きたい、ということは結婚前から二人で話し合っていたものの、最後の一歩を踏み出せずにいた良太さん。その背中を力強く押したのが、友香さんだった。

「お店いつやるの? って詰め寄りました。主人はまだ20代後半で、やりたいことにチャレンジするなら今じゃないかと思って。もしダメだったとしても、やり直せる年齢じゃないですか」

実は友香さん、雇われない生き方を目指すために、飯山商工会議所が主催する創業スクールに通ったことがありました。母親が経営する「スナック山路」の空き時間を利用して、昼間にカラオケ喫茶店ができないか? と、ビジネスプランを考えていたそうです。

夫婦でカレー店をやることを決意して、良太さんは会社に辞意を表明。
「社長に話したことで覚悟ができました。崖から飛び降りた(笑)」 と良太さん。それが昨年、令和元年12月の出来事でした。

翌年3月末には夫婦そろって仕事を辞め、そこからは「コロナだけどやるしかないぞ!」と、開店に向けて突き進みました。

お店をやることで「飯山を盛り上げたい」という思いもかなった

大好きなスパイスカレーに専念したい良太さんと、起業したい友香さんの思いが融合した「カリースパイス山路」は、スナックの間借りというスタイルで、コロナ禍の令和2年4月21日にオープンしました。 

看板メニューの「山路カリー」は、酸味のあるチキンビンダルー。 新しいカレーにチャレンジしたい良太さんは、週替わりカレーも作っている。

ランチメニューは、3種類から2つ選べるカレーとドリンクのセット 。プレートの盛り付けはインスタ映えを意識して、色のバランスを二人で研究して決めました。狙いは当たり、Instagramの写真を見て訪れる若いお客さまが多いそうです。

「どちらから? と声をかけると、長野市からのお客さまが7~8割くらい」と接客を担当している友香さん。

スパイスカレーを食べるために、はじめて飯山を訪れた、という方も結構いるのだとか。店内には信州いいやま観光局による「飯山おせっかいマップ」を常備し、市内のおすすめスポットをお客さまに紹介している。 

地元を盛り上げたいという気持ちはあったものの、飯山には自分が楽しいと思えるものが少ない…そんなジレンマがあった友香さんは「飯山に人を呼びたかったんです。カレーを食べに、市外からたくさんの人が来てくれてうれしい」とほほえみます。

友香さんは、飯山商工会議所が主催する「いいやま雪まつり」の実行委員会のメンバーで、青年部にも所属。良太さんは飯山市若者会議の副会長を務めるなど、夫婦で地元を活性化する活動に関わっている。

カレー店を経営することで、「自分にとって楽しく、居心地の良い飯山」を、自ら作りだしている充足感を得ることもできたのでした。

9月に市内で開催された野外イベントに初めて出店。40食用意したキーマカレーは、あっという間に完売した。

自分らしく自由に生きたい。そんな夫婦が考える今後の展開

「ふたりの根底にあるのは自由にやりたい、自分らしく生きたいということ。それにたまたま今、カレーがうまくハマっているのかもしれません」と良太さん。

雇われなくなった開放感から、K-POPが大好きな友香さんは、髪を金髪にしてみた。一方、自由には苦労もあることも感じている。

「独立してお店をやってみると大変! 経済的に安定した生活を考えるなら、安易におすすめはしません(笑) 」

そんな二人が考える、今後の展開は?

「良い物を作っている知り合いとコラボして、オリジナル商品を作リたい」と、友香さん。もう一店、雑貨店も開いてみたいそうです。

まずは自らデザインした「カリースパイス山路」のロゴを入れた木製のコースターを、友人である「神仏の鷲森」6代目鷲森秀樹さんに作ってもらいました。

また、良太さんの両親が白馬村ではじめたカフェでカレーを提供したり、キッチンカーでの移動販売などもやってみたいそうです。

スパイスカレーというコミュニケーションツールで、飯山を盛り上げている 横川夫妻。今後の展開が楽しみですね。

カリースパイス山路

Instagram  @curry_spice_yamaji

ランチ 11:30~14:00(LO)14:30
(スナック営業は19:00~23:30)
定休日 日・月曜日
遠方からのお客さまが多いことを踏まえ、9月からランチ営業のみになりました。夜はスナックでカレーを食べることもできます。

(取材・撮影:佐々木里恵)