樋口まさみさん

田舎だからできる。挑戦せずに諦めるなんてもったいない

飯山の駅近く、商店街の一角にある美容院Hair Design LOOPY。オーナーの樋口さんは、専門学校を出てから美容師として勤務したのち、30歳のときにUターン。現在の場所で独立開業を果たしました。栄村で生まれ育った樋口さんにとって、飯山市は高校時代を過ごした馴染みのある街です。お店の近くには当時通っていたという食堂やお店もあり、インタビューのあと懐かしそうに紹介してくださいました。

先生の言葉に後押しされ美容師に

樋口さんが美容の道に進むことになったのも、飯山で過ごした高校時代のことでした。
「野球部の友だちから頼まれて、髪をバリカンで刈っていたんです。そうしているうちに口コミが広まって、他の友だちの髪もカットしていました。担任から“そういう学校、いいんじゃない?”って声をかけてもらったのが、専門学校に進んだきっかけです」。
当時は、あまり将来のことは考えていなかったという樋口さんですが、専門学校で学ぶうち、美容師でやっていこうという決心とともに、「ゆくゆくは自分の店を持ちたい」という憧れを持つようになったと言います。

30歳を目前に見えてきたもの

最初の就職先は、専門学校があった新潟市内の美容院でした。お客様と丁寧に接することを心がけ、自身の強みとしてきた樋口さん。何店舗か勤務を経験をするうちに、回転率を重視し、効率化を求められる働き方に違和感を覚えるようになったと言います。
「時間が足りなくて、申し訳なくなることもありました。“自分だったらもっとこうするのに”という感覚のズレが募ると共に、30歳までに自分の店を構えたいという思いが蘇りました」。
ちょうどその頃、プライベートでは結婚をし、子育てがスタートしていました。子どもと過ごす時間の中で、樋口さんは、都会での暮らし自体にも疑問を抱くようになります。
「自分の子ども時代が次々と思い出されてきて。虫を採ったり、走り回ったり、長野の田舎だからできた体験を、子どもたちにもさせてあげたいなと、当時は本当に強く感じました」。
当時28歳、長野県へのUターンや、独立に対する思いが樋口さんの中で徐々に大きくなっていきました。

飯山での挑戦

 

「近くにオシャレな美容室がないんだよね、都会と違って」。
帰省した時に同級生から聞いた言葉が、独立とUターンを考えていた樋口さんの興味を動かします。当時の飯山では、美容院に行くとなれば、長野市を始め近隣地域まで通うか、近くの1000円カットを利用するかの、だいたいどちらかでした。みんなの言葉の節々に、「近くにオシャレな美容室があったら行ってみたい」そんな希望が感じ取れたと言います。
「手頃な金額でカットできる店が主流の地域で、“やっぱり都会はちがうよね”っていう話が出るたびに、どこか違和感があったんです」と樋口さん。諦めてしまっている空気をちょっとでも変えてみたい、もっと攻めたことをしてみたい。色々な人と話をしていく中で、飯山市ならば、それができそうな可能性が見えてきました。

田舎だからこそできることがある

 

Hair Design LOOPYが目指しているのは、“ちょっとおもしろい美容室”です。
地方で独立するのにノープランでは通用しない、と考える樋口さん。宝飾店を全面改装した店内は、カフェ&バースペースやキッズルーム、VIP対応できる個室など、他とはちょっと違う、過ごす時間を大切に考える樋口さんならではのこだわりが詰まっています。
「カット後にちょっと一杯とか、待っている家族が過ごせる場所があってもいいかなと思って。カフェのみ利用もOKにしています。美容院に来る目的が“髪を切る”だけじゃない、っていうのも面白いかなと思っています」。

カフェのドリンクや美容院の商材は、“気にはなっていたけど自分では試さないようなもの”をコンセプトに、新しいものや話題のものを取り揃えて個性を。その一方で、足腰が悪く何度も移動するのが大変な人のことを考えて、座ったまま使えるシャンプー台を使うなど、地域柄への配慮も欠かしません。田舎だからできること、それは必ずしも新しい挑戦だけではなく、思いやりや気遣いといった「当たり前」を改めて見直していくことなのだと感じました。

もっと自由に、攻めていこう

お香を焚く、音楽を流す、ちょっと変わった雪だるまを作る、と、今まで商店街にはなかった挑戦を日々続けているHair Design LOOPY。
「宣伝をバンバン打って浮遊客をとらえるのではなく、地元の人の口コミで“地域に根ざす店”として確立していきたい」という開店当初の強い思いは、3年目にして少しずつ形になり始めています。最近では、LOOPYを気に入ってくれたお客様がお友達を紹介してくれることも増え、新たな交流が生まれているそうです。
樋口さんの夢は、一風変わった美容室をこの地域に数店舗開いていくこと。
「“やってみたい”という気持ちは、田舎でも都会でも同じはずだと考えています。田舎でもできる、田舎だから楽しい。そんな“攻めた空気”を、まずは飯山で、試行錯誤しながらつくっていきます」と、笑顔で今後の抱負を語ってくださいました。