余頃友康さん

森林に関わる課題解決と新たな価値を提案する「フォレストデザイナー」

個人事務所「フォレストデザイン」代表でフォレストデザイナーの余頃友康(よころ・ともやす)さん。
事務所は、鷹落山の麓のゆるやかな斜面に広がる小境(こざかい)集落にある、築150年の古民家「いいやま里の家」。ここでは、通年で里山体験を受け入れています。
「森林に関わる課題の解決と森林に求められる新たな価値の提案をしていく人」という意味を込めて自ら名付けた「フォレストデザイナー」として、様々な人を巻き込みながら自らのアイディアを形にしていく、パワフルな余頃さんにお話を聞きました。

3つの事業を展開

2014年に設立したフォレストデザインは、「森林環境教育」「森林整備」「里山資源活用」の3つの事業を行っています。
「森林環境教育」では、林間学校の体験メニューの一環として、林業体験、工作体験などのプログラムを提供。
また、文化学園長野中学・高等学校の「自然科学部」の生徒に、間伐体験、棚田の田植え体験など、信州大学の建築学科の学生に、間伐材と建設会社で使い道のない古材を使って小屋を一棟建てるプロジェクトを提案し、昨年はチェーンソーの講習会を開くなどしてきました。様々な形で、若い世代に向けて教育をしています。

「今、林業は社会の端っこにあって、林業の側から、世の中に対するアクションが弱い。林業を田舎と言い換えてもいい。世間をこちら側に引き入れなければならない」
建築学科の学生に、座学だけではなく木の家を建てる経験をさせようというのも、日本の森林の未来をどうにかしたいというテーマを持って活動する余頃さんの思いです。

「森林整備」事業としては、森林の管理に必要な作業を山主に提案して実施しています。
「昭和30年くらいまでは日本の山は丸坊主で、頑張って植樹してきたんです。今、山に木があるのを当たり前に見ているが、ものの本によると、これは400年ぶりの景色。かつては、燃料、さまざまな道具の材料などすべてが木。“山持ち”は“金持ち”でした。ところが、昭和55年をピークに木材価格が低下し、国産材が自分の力で回らなくなりました」
他に、屋根の上に出ている枝、お墓の上の枝など、枝を下に落とさずに上から切る、難しい「特殊伐採」も行っています。

アイディアから生まれる「里山資源活用」

 

余頃さんのアイディアで生まれた製品の一つが、飯山市の森林整備で出た間伐材などでつくる「ログファイヤ―」。林野庁の「間伐・間伐材利用コンクール」で、2018年に審査委員長特別奨励賞を受賞しました。
外での照明、暖房、調理の熱源として使え、3分以内に火が付くという着火の素早さが特徴です。下まで十字に切り込みが入っているだけのものはすでにありましたが、点火部分にくぼみを作って刻みを入れるという独自の工夫を加えました。

アイディアがふとわいてくるという余頃さん。思いついたら即メモをします。
「人がやらない商売を見つける。ただのものをお金に変える天才だと思う(笑) 自己肯定感のかたまり。楽しそうだねってよく言われます」
他にも、裏山から伐採した木でコースターを作り、ネットで販売しています。

箸づくり体験の材料も、自分で山から切ってきた木材です。
「はじめは、ただの棒きれを目の前に、子どもたちが真剣に取り組まなかった」
どうしたものかと考え、体験の前に、林業のフルセットの装備を身につけて説明するようにしたといいます。
「目の前に用意されている棒きれが、何十年もかけて育った木で、枝打ちなどの施業を経て、伐採して搬出してトラックで運んで、チェーンソーで玉切りして、斧で割って鉈でさらに割って…それを経て目の前にあるという話をすると、子どもたちは“感じる”んです。そうやって、何でも環境教育に変えていく。でないと、ただの工作になっちゃう」

冬のアクティビティとして“かまくらづくり”

飯山に降る重く湿った雪は、住民に嫌がられてきました。
でも、かまくら遊びにベストな雪質で、今では「かまくらの里」として知られるように。
「いいやま里の家」では、かまくらづくり体験を提供。参加者は、囲炉裏を囲んで焼き鳥を焼くなど、昼食作りもします。
「かまくらを作ったお客さんたちは、すごくうれしそう。この価値はよその人でないとわからない。かまくらづくり、古民家でご飯食べること、全部がアクティビティです」
違いや差がわかると、優位性に気付くことができる―だから、よその人の目線が重要だと余頃さんは話します。
「飯山の人は東京を同じ国だと思っているが、違う国。僕らはそこと“貿易”をするんです。もう3月だというのに、この雪だもの。これはもう日本じゃない(笑)そういう発想で仕事をするかどうかです」

飯山の良さをもっと知ってほしい

広島県出身で、20代前半で飯山に移住してきた余頃さん。以来、ずっと住み続けています。
「いいやま里の家」の先から一望できる景色を、「ぜひに」と見せてくれました。
広島の人の特性として、すぐ自分のお気に入りを「ええじゃろ」と見せるそう。それは自慢ではなく、「良いものを一緒に共有したい」という気持ちだといいます。
「日本のすべての県を回って見たが、ここは、里山風景としては日本の中でかなり上位に入る景色。かなりハイレベルなのに、飯山の人たちは気づかない。気づいても、地域性として言わないから知られようがない」
ここは西日本の人間の出番だ、と余頃さんは笑います。

「僕の仕事は“止まり木”“よりどころ”“島”を作ること。よそには、地域のために何かを本気でやろうという人には意外と協力してくれる人はたくさんいます。そのために、人が集まる場、入れ物を作る。そうすると、一人の力ではどうにもならないことでも、どうにかなってくるものです」

「林業」と「福祉」の林福連携に取り組み、森林浴や森林ウォーキングを取り入れた認知症予防の調査に協力、持続可能な開発目標(SDGs)を活用した地域課題解決など、様々な取り組みを並行して進め、「1日があっという間に終わってしまう」という余頃さん。
自分だけが得をするのではなく、自分、そして地域が良くなるようにと動き続けています。